人事労務ニュース
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文書作成日:2025/09/02

2024年度の労基署監督指導における賃金不払事案件数は172億円

先月、厚生労働省は「賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和6年)」を公表しました。これは2024年1月から2024年12月までに、全国の労働基準監督署が、賃金不払が疑われる事業場に対して実施した監督指導の結果を取りまとめたものです。以下ではその結果と実際の監督指導の事例をとり上げます。

[1]監督指導状況
 2024年に全国の労働基準監督署で取り扱った賃金不払事案の件数、対象労働者数及び金額は以下のとおりです。

 件数 22,354件(前年比1,005件増)
 対象労働者数 185,197人(同3,294人増)
 金額 172億1,113万円(同70億1,760万円増)

 件数を業種別にみてみると、商業の4,494件がもっとも多く全体の20%を占め、製造業4,297件、保健衛生業3,416件、接客娯楽業2,832件、建設業2,213件と続いています。一方、金額を業種別にみてみると、運輸交通業の70.2億円がもっとも多く全体の41%を占め、保健衛生業25.6億円、製造業18.6億円、商業13.9億円、建設業9.2億円と続いています。

[2]監督指導の対象となった事案
 本結果の中では「監督指導による是正事例」が紹介されています。自社の労働時間管理の在り方を見直す際の参考となりますので、ここでは割増賃金の適正な支払と労働時間の適正な把握に関する指導事例をとり上げます。

[概要]
 始業前に清掃作業を命じられているにもかかわらず、賃金が支払われていないとの情報を受け、労働基準監督署が立入調査を実施したところ、以下の実態が認められた。
  • 使用者の指示により清掃作業が行われていたが、その分の割増賃金が支払われていなかった。
  • 当該清掃作業後にICカードを打刻しており、同作業が労働時間として記録されていなかった。

[労働基準監督署の指導]

  1. 割増賃金の適正な支払について是正勧告(労働基準法第37条第1項違反)等
     時間外労働に対する割増賃金を再計算した上で、実際の支払額との差額を支払うこと。併せて、過去に遡って各労働者から事実関係の聞き取りを行うなどの実態調査を実施し、実際の支払額との差額の割増賃金の支払が必要となる場合には、追加で支払うこと。
  2. 労働時間を適正に把握するため以下について指導
     使用者の指示により行われた清掃作業等は労働時間に該当することを説明し、労働時間を適正に把握するため、清掃時間も含めて正確な始業・終業時刻を記録すること。

 その後、事業場の対応として、清掃作業について労働者へのヒアリングを行い、正しい労働時間数に基づいた差額の割増賃金を支払ったとのことです。また今後、清掃作業は、就業開始後に行うよう管理者を含めた関係労働者に対して指示が行われました。

 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドラインの中は、労働時間とは、「使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる」とされています。例えば、使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業場内において行った時間は労働時間に該当します。改めて、労働時間の取り扱いに問題がないかを確認し、問題があればすぐに改善しましょう。

■参考リンク
厚生労働省「賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和6年)を公表します

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

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