コラム
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作成日:2018/12/30
あしたの賃金支払



 
一般的にはあまり知られていないかもしれないが、労働基準法の中には、「賃金支払5原則」というものがある。

内容をかいつまんで言うと、同法第24条において以下の通り定められている。

1.賃金は通貨で支払わなければならない。

2.賃金は直接本人に支払わなければならない。

3.賃金は全額を支払わなければならない。

4.賃金は毎月一回以上支払わなければならない。

5.賃金は一定の期日を定めて支払わなければならない。

 

もちろん、「原則」というからには、それぞれ例外も認められており、また時代の流れとともに柔軟な運用も可能になってきている。

先日も、政府の国家戦略特区諮問会議において、電子マネーによる賃金支払を解禁する方針を決め、来年度からの実施を目指しているというニュースが流れた。これは、改正出入国管理法施行を見据え、外国人労働者の受け入れ基盤を整備するのが狙いということだが、

今後も様々な経済や雇用環境等の変化に対応して、上述の5原則は変遷していくことであろう。そこで、遠くない将来において、どのような支払いスタイルが実現されているか。少し空想してみた。

 

1.賃金は通貨で支払わなければならない。(通貨とは、国内で強制的に通用する貨幣、即ち「円」で支払わなければならない。外国通貨や小切手、また現物給付も原則認められていない。銀行口座振込は本人の同意という条件つきで可能という理屈になっている。)

 →今後は、現金支払が原則禁じられ、電子マネーか口座振込が主流となる。本人が希望すれば、ドルやユーロ払い、金などの現物給付あるいはこれらの組み合わせも可能となるかもしれない。長期の海外出張者は外貨建ての方が便利だし、通勤手当や(賃金ではないが)出張旅費などは、精算も含めて交通系電子マネーの方が手間はかからないのではないか。

2.賃金は直接本人に支払わなければならない。(いわゆる代理人に支払うことは認められていない。但し、本人が病気等の場合にその使者に支払うことは差し支えないという摩訶不思議な解釈がなされている。)

 →今後は、本人の申請により、任意の第三者への直接支払いが認められる。もちろん、本人の自由意思によるものであることが担保されてないといけないが、例えば家族の口座(仕送り先など)に直接支払うことも可能となる。

3.賃金は全額を支払わなければならない。(税金や社会保険料の他、労使協定がある場合に一部を控除して支払うことが認められている。)

 →この原則は今後もあまり変わりがなさそうだ。ただ、社内で物品を購買したときの支払いを、給与控除からではなく、その都度の電子マネー決済がより普及するかもしれない。

4.賃金は毎月一回以上支払わなければならない。(賞与は例外として認められている。)

5.賃金は一定の期日を定めて支払わなければならない。(周期的に到来する一定の期日、毎月○○日と定めて支払わなければならない。)

 →今後は、年払い、半年払いや四半期払いも可能となる。差し詰め、請負(業務委託契約)の着手金・中間金・完了後残金のようなイメージだ。有期雇用契約の高度プロフェッショナル社員あたりに浸透していくかもしれない。

 

 大昔、給与の銀行振込が普及し始めたころ、「有難みがない」「稼いだ実感がわかない」

「いちいち引き出すのに不便」、果ては「現金を持って帰らないと家長の威厳が損なわれる」などという、今となっては笑い話のような抵抗意見もあった。

 もし今後、上述のような賃金支払方法の弾力化が進んだら、またぞろ同じような反対意見が出され、やがて一笑に付されていくのだろうか。

 

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