コラム
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作成日:2018/12/30
年次有給休暇の行く末



  6月に国会で可決・成立した「働き方改革関連法案」の施行まであと半年を切った。

今回の改正の目玉である「時間外労働時間の上限規制の導入」と並んで、多くの会社に影響があると思われるのが、「年次有給休暇の取得の年5日強制取得義務」である。これは、年10日以上有給休暇を付与されている労働者に対し、毎年5日の取得を会社側に義務づけるという内容となっている。業種や企業規模に関係なく201941日から施行されるため、残業時間の規制よりも、こちらの対策が急務だという会社も少なくないだろう。因みに、違反した場合は30万円以下の罰金だ。

 日本の年次有給休暇は、戦後の1947年に定められた労働基準法に最低付与日数を6日と規定したのが最初である。以降、1988年には最低付与日数が10日に引き上げられ、労使協定による有給休暇の計画的付与制度が導入され、通達で半日単位の分割が是認されていった。さらに、1994年に有給休暇の発生要件を勤続1年→勤続6か月に拡大し、2010年からは労使協定により1時間単位に分割した有給休暇の取得が可能となった。
 それでも、有給休暇の実際の取得日数は増えず、取得率は上がってこない。(2017年の厚労省調査では、平均付与日数は18.2日、同取得日数は9.0日、取得率は49.4%となっている。)

そこで今回の法改正。本来の趣旨から大きく逸脱してまで会社が強制的に有給休暇を取らせる、取らせないと罰則とまできた。果たして取得日数・取得率向上の妙手となるか。これでも上がらないとなると次にどういった手を打つのだろうか。

全員に年5日を上回る有給休暇を取得させた企業に助成金を支給する?尻すぼみになっているプレミアムフライデーをいっそのこと有給休暇取得日としてPRする?

そんな甘いことでは同じ轍を踏む。

さらになりふり構わぬ施策に打って出たとすると・・・・・こんな空想をしてみた。

 

(1)分単位有給休暇(通称:分休)制度 

1分単位に分割した有給休暇の取得を可能とする。遅刻や早退、長めのトイレやタバコ休憩等も周りの白い目を気にせず堂々と休める。(侮るなかれ。15分の取得でも月100分、年間1200分=20時間=2.5日分の有給休暇に相当する。)

(2)休日からの振替促進

年間120日以上の休日がある会社には、休日数減らして、その分有給休暇の計画的付与日として振り替えていくことを公式に認める。(この労働条件変更に限り、不利益変更の例外とする)

(3)有給休暇買取り制度 

現在は原則禁止とされている有給休暇の買取り認め、会社側が買い取った日数は取得したものとしてカウントされる。そのうちには、社員間での売買を認めることも考えられる。

有給休暇の取得がままならない社員がいる一方で、もっと有給休暇を必要とする社員もいる。買い取った社員が実際に休めば売った社員が休んだとみなすという、いわば代理取得制度だ。(「有給休暇債権」として本格化すると、社内に有給休暇ブローカー社員が暗躍するかもしれないので、その点は何らかの価格規制等が必要だろう。) 

(4)みなし有給休暇取得制度

裁量労働制が適用されている社員については、本人が宣言したら、実際には働いてようが、何しようが、誰が何と言おうとその日は有給休暇を取得したものとみなす。

 

まさか、突拍子もない?3年後には、「有給休暇取得促進特別法(正式名称:年次有給休暇の取得を促進するための関係法律の整備に関する特別法)」、俗に「ユウトク法」として、労働法制史上比類なき悪法として名を刻むことになるかも知れませんよ。

 

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