コラム
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作成日:2018/03/01
働き方改革とAI



  以前のコラムでも書いたが、新聞・テレビやネット上では毎日のように「働き方改革」という言葉を見聞きする。(少し前までGoogleアラートの検索ワードに「働き方改革」を登録していたが、あまりにも記事が多く読み切れなくなりやめてしまったほどだ。)

 

働き方改革の大きな柱の1つは「長時間労働の是正」だ。全体の生産量を維持しつつ各人の労働時間を減少させようとすれば、高齢者や女性、外国人労働者の労働参加増により労働力人口減少に歯止めをかけることと、業務プロセス等の見直しにより一人当たりの労働生産性(一人当たりの付加価値額)をあげるということがどうしたって必要になる。しかしこの2つは、働き方改革が叫ばれる遥か以前からの古くて新しい命題であり、抜本的な解決は簡単な話ではない。

 

そこでAIartificial intelligence:人工知能)である。個人的には、今後汎用型のAIと言われるものが本格的に台頭してくれば、相当の割合の仕事がAIにとって代わり、この問題は雲散霧消するのではないかと思う。問題解決の最重要ファクターの1つであるAIが、「働き方改革」自体を、またぞろ一時のブームになり下げてしまう可能性が十分にあると思っているのである。

 

 今年(2017年)3月に出された「働き方改革実行計画」では、AIについての記述はわずか数行、AIなどの第4次産業革命が働く人に求められるスキルに急激な変化を与えることについて示唆するのみであったが、同8月に出された「働き方の未来2035」では、数ページを割いて、技術革新がこれからの働き方に与えるインパクト、今後AIによる代替が進む業務領域、人との棲み分け・共存等について触れられている。表題は「働き方の未来」とあるが、今から18年後の姿は未来のおとぎ噺ではなく、蓋然性の高い将来像として如何に備えるべきかを考えるべきだろう。

 

 もちろん、現段階ではAIの発展時期には諸説ある。過小評価も過大評価もいけないのだが、確度の高い予測は現時点では難しい。だいたいこういうものは楽観的予測と悲観的予測が存在するもので、しょせん単純定型作業中心の代替に過ぎないとの見方から、AIは加速度的に進化し、いずれ人類の全知を超える技術的特異点(シンギュラリティ)が2045年頃に起こり、最終的には人類が労働から完全解放されるという予測まである。スピード感については、技術系思考の予測よりは遅く、人文系思考の想像よりははるかに早く進むのというのが、いい線行く予測だと勝手に思っているのだがいかがだろうか。

 

シンギュラリティが本当に起こるかどうかは、私は懐疑的なのだが、少なくとも、AIによって支えられた新しい労働社会が構築され、現在の働き方から相当に変化するのは間違いないと思う。(それだけではなく事業構造、会社組織、産業、経済、生活様式が一変するだろう。)AIをはじめとした第4次産業革命には、AIが人工「知能」であるが故、単なる技術開発のみでなく、法整備や倫理観、ある意味哲学的思想の整理も必要だから、これまでの第1次〜第3次の産業革命のように、技術オリエンテッドに成り行きを任せていては、働く者にとって幸せな未来は到底やってこないと思う。

 

覚悟を決めて新しい環境にどう向き合っていくか、あるいは流れに抗い目を背けてやり過ごすか。どう臨むにせよ、すでに変革の萌芽と浸透は、そこかしこで日々起こっている。

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